長沼勇也

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長沼 勇也(ながぬま ゆうや)とは、複数の交際女性の顔をライターの火であぶり、殺害した女性遺体とともに約2カ月間、逃避行を続けていた異常犯である。

事件概要[編集]

交際していた女性の遺体を京都府八幡市内のスーパー駐車場に止めた軽乗用車の助手席に放置、遺棄した男が2011年夏、京都府警に死体遺棄容疑で逮捕された。 その後、傷害致死容疑で再逮捕されたが、男は車内で日増しに損傷が激しくなっていく遺体とともに約2カ月間、逃避行を続けていたことが明らかになり、猟奇的な事件として世間の耳目を集めた。さらに別の複数の交際女性の顔をライターの火であぶるなど、加虐的な犯行も昨年末にかけて次々と立件されている。

変わり果てた遺体[編集]

「駐車場に止まった車から異臭がする」

2011年8月20日午後、京都府八幡市内のスーパー「ラ・ムー八幡店」の店長からの通報を受けた府警八幡署員たちがスーパー駐車場に駆けつけた。

軽乗用車に近づき、無施錠の助手席のドアを開けると、激しい腐臭が鼻をついた。コートなど上着が何重にもかけられ、盛り上がった助手席のシート。署員が上着をはぎ取ると、変わり果てた遺体が姿を現した。

バッテリーがあがり、ガソリンも尽きかけた真夏の車内。遺体はほぼ白骨と化していた。車内にはペットボトルや雑誌などのごみも散乱していたという。

当時、しばらくスーパー駐車場に止められていた車の中で寝泊まりする20~30代の男が複数の店員らに目撃されており、男は遺体が発見される直前にこつぜんと姿を消していた。

DNA鑑定で遺体は軽乗用車の所有者だった岐阜県瑞浪市の無職、日比野茜さん=当時(34)=と判明。遺体の損傷が激しく、正確な死因は不明ながらも、死亡時期は6~7月ごろと推定された。

府警はその後の捜査で、男が日比野さんと交際していた住所不定の無職、長沼勇也被告(23)=死体遺棄、傷害致死などの罪で起訴、公判前整理手続き中=と断定、死体遺棄容疑で指名手配した。

8月24日夕方、駐車場から約4キロ離れた路上で捜査員が長沼被告を発見。職務質問に対し、当初は落ち着いた様子で偽名を名乗り、「彼女に会いに行くところです」などと嘘をついたが、任意同行で車両に乗せられると観念した様子で本人だと認めたという。

府警によると、長沼被告は死体遺棄容疑で逮捕された当時、「逮捕されてほっとした」などと供述。しかし、駐車場で目撃された長髪に無精ひげ、作業着という姿に対し、逮捕時は黒色のTシャツにサンダル姿、髪形も変えてひげもきれいにそるなど風貌が激変していた。

捜査関係者は「嘘を言って捜査員をだまそうとし、外見の印象もがらっと変えた。うまく逃げようとしていたのではないか」と指摘する。

家族を捨てて…[編集]

日比野さんと長沼被告が出会ったのは平成22年秋。日比野さんは離婚後、両親や幼い長女と暮らしており、アルバイトとして働いていた瑞浪市内のパチンコ店に長沼被告が勤め始めたのがきっかけだった。急速に仲を深め、同12月、日比野さんは長女を市内の保育園に預け、自分の軽乗用車で長沼被告と姿を消した。両親には何も告げなかったという。

所持金はわずかで、持ち物は数日分の着替えのみ。2人は、長沼被告が過去に遊びに行ったことがあるという大阪を目指していたとみられる。行く先々のパチンコ店に立ち寄り、長沼被告が稼いだ金でホテルに泊まり、現金が尽きると車内泊を繰り返した。

手と手を取り合って飛び出してはみたものの、希望が全く見いだせない現実に直面し、2人の関係は次第に険悪になっていったのだろうか。駆け落ちから半年後。遺体発見の約2カ月前となる2011年6月ごろには、大阪府豊中市内で口論する姿が目撃されている。

遺体とともに2カ月[編集]

逮捕後、長沼被告は「大阪府枚方市内のホテルで日比野さんと別れ話などで口論になり、突き倒した」と供述した。

その後、府警はホテルで突き倒した日時を6月29日~7月1日とほぼ特定。この後に日比野さんの体調が悪化したとみられることから、ホテルでの暴行が頭部打撲による頭蓋内出血を招いたと判断し、9月に傷害致死容疑で再逮捕した。10月、京都地検は死体遺棄と傷害致死の罪で起訴した。

一方、長沼被告の弁護側は京都地裁で開かれた勾留理由開示手続きで、別れ話で口論になった日比野さんが走行中の車の助手席から飛び降り、頭部打撲による頭蓋内出血で死亡した-と主張、傷害致死容疑を否認した。

日比野さんの遺体は車内で動かされた形跡がなかった。つまり傷害致死罪の成否は今後の公判に委ねられるとしても、長沼被告が約2カ月間にわたって車内で遺体と過ごしていたことはほぼ間違いない。

なぜ、そんな異常な事態が続いたのか-。

当時、長沼被告は「警察に行こうと思ったが、躊躇して行けないまま時間がたってしまった」と話したという。しかし、ある捜査関係者は「遺体が腐敗すれば暴行の跡も消える。遺棄して早期に発見され、死因が特定されることを恐れたのではないか」と指摘する。

加虐的な性癖[編集]

わずか1カ月ほどの短期間の交際にもかかわらず、日比野さんに生まれ育った故郷と両親、そして長女を捨てさせた長沼被告とはどんな男なのか。

身長は170センチほどでスマートな体形。ゆるくウエーブがかかった長めの髪に穏やかそうな目。一見すると、流行の“草食系男子”のような風貌だ。少年時代は地元の野球クラブに所属し、白球を追って汗を流す一面もあった。

一方で交際する女性に加虐的に暴行を繰り返す“裏の顔”を併せ持っていた。逮捕後の府警の調べで、長沼被告が、日比野さん以前に交際していた20歳代と30歳代の2人の女性=いずれも岐阜県在住=に対し、ライターの火であごをあぶったり、カミソリで腕を切りつけたりといった暴行を加えていたことが発覚。府警は2011年10、12月にそれぞれ傷害容疑で逮捕した。

捜査関係者によると、長沼被告は「家族をめちゃくちゃにしてやるぞ」と脅すこともあった。暴行を加えた後、決まって女性に甘い言葉をささやき、人が変わったように手厚く扱ったという。

捜査関係者は「目をつけた女性に積極的に言い寄って交際を始め、徐々に暴行をエスカレートさせて女性がおびえる様子を楽しんでいたようだ。女性を洗脳して支配するため、アメとムチを使い分けていたのか」と語る。

暴行を受けたとされる2人の女性は被害届を出した際、捜査関係者にこんな悲痛な思いを訴えたという。

「自分が訴追することで、1年でも長く刑務所に入れたい」

家族を捨てた駆け落ちの末、命を落とした日比野さん。そして、ゆがんだ支配欲に心身ともに傷つけられたとされる2人の女性。長沼被告が彼女たちに残した傷跡はあまりにも深い。